2019年12月 第40号 発行 聖ベネディクト女子修道院
猫の額ほどの私の花壇もひと雨毎に晩秋の佇まい。
裏山から栃の葉や白樺、楓等の色鮮やかな枯葉がクルクルと舞い降りて来る。
敷き詰められた枯葉の上に水霜が降り、始末もなかなか骨の折れる仕事になる。
カゴ一杯の枯葉を眺めていると、遠い昔の枯葉の話を思い出したのです。
それは、中学時代の学校祭で「最後の一葉」(オー・ヘンリー作)の劇を上演したことでした。
今思うとシナリオの内容よりも、全員で力を合わせ作り上げたという達成感から来る喜びが印象に残っているばかりでしたが、同名の絵本に出会い考えさせられました。
あらすじ(ウイキペディアから)を引用してみます。
ワシントン・スクエアの西側にある、芸術家が集まる古びたアパートに暮らす画家のジョンジーと同じく画家のスー。
貧しいながら暖かい生活を送っていた中、ある日ジョンジーは重い肺炎を患ってしまう。
スーは医者から「ジョンジーは生きる気力を失っている。
このままでは彼女が助かる可能性は十に一つ」と告げられる。
心身共に疲れ切り、人生に半ば投げやりになっていたジョンジーは、窓の外に見える煉瓦の壁を這う、枯れかけた蔦の葉を数え、「あの葉がすべて落ちたら、自分も死ぬ」とスーに言い出すようになる。
彼女たちの階下に住む老画家のベアマンは、口ではいつか傑作を描いてみせると豪語しつつも久しく絵筆を握らず、酒を飲んでは他人を嘲笑う日々を過ごしていた。
ジョンジーが「葉が落ちたら死ぬ」と思い込んでいると伝え聞いたベアマンは「馬鹿げてる」と罵った。
その夜、一晩中激しい風雨が吹き荒れ、朝には蔦の葉は最後の一枚になっていた。
その次の夜にも激しい風雨吹きつけるが、しかし翌朝になっても最後の一枚となった葉が壁にとどまっているのを見て、ジョンジーは自分の思いを改め、生きる気力を取り戻す。
最後に残った葉はベアマンが嵐の中、煉瓦の壁に絵筆で精緻に描いたものだった。
ジョンジーは奇跡的に全快を果たすが、冷たい風雨に打たれつつ夜を徹して壁に葉を描いたベアマンは、その二日後に肺炎で亡くなる。
真相を悟ったスーは物語の締めくくりで、あの最後の一葉こそ、ベアマンがいつか描いてみせると言い続けていた傑作であったのだと評する。
人生の終末に自分が常日頃、思い描いていた生き方が実行できたベアマンの生き様は、何と羨ましいことか、と感嘆せずにはいられません。
『友のために自分の命を捨てる。これほど大きな愛はない』とのイエスの言葉を、命を懸け最高の傑作を描くことで成し遂げたのです。
「濡れ落葉」「窓際族」などの言葉が流行した時期がありました。
枯葉、濡れ落葉。大いに結構!まだまだ大きな使命があります。
春や夏は緑で人々を癒し、秋には紅葉で楽しませた葉は地に落ちて、木々の根を養う栄養たっぷりの土になるのですから。
私たちの人生もこのようでありたいものです。
さあ、枯葉をいとおしみながら、花壇の整理に精を出すことにしましょう。